ジャンルを超えたコラボレーションで生まれた、配信限定ショートミュージカル。
この作品は、コロナ渦で女性の自殺率が急増した事から
改めて日本のダイバーシティについて考え直し色々と話を聞く中で、
長年やりたかった“女性応援ミュージカル”を創る必要性を感じ、企画しました。
その想いが生まれたのは、全員女性クリエイター達で創られた事でも話題になったブロードウェイミュージカル「ウェイトレス」に、ボストンのトライアウト公演(教育・アウトリーチインターン)とブロードウェイ公演(演出部)に携わり、憧れの演出家ダイアン・ポーラスの作品創りの現場に入れたのが原体験です。ブロードウェイでも日本でも「ウェイトレス」が開幕したのは、女性史月間の3月。コロナ禍の3月にこそ、この企画を立ち上げる意義を感じたので、をその第一歩たので、異ジャンルの多才な方々のお力をお借りしたおかげで実現できた事に、心から感謝しています。
作品の土台となったのは、オフブロードウェイアライアンス賞受賞作曲家である、Carmel Dean の最新作「WELL-BEHAVED WOMEN」。同作は、クレオパトラや画家フリーダ・カーロなど、女性達が自らの生き様を歌うソングサイクルで、2020 年1 月に NY にて、ブロードウェイスター達によるコンサート版として披露されました。2021 年 3月、シドニーで世界初演が大好評で終わりました。今回はこの中から、”女性”として生きる事を改めて考えるきっかけをくれた男女の役割分担が生まれたアダムとイブのイブの歌、男女の賃金格差が大きかった時代に同等の扱いを勝ち取る男女の試合をしたテニスチャンピオンのビリー・ジーン・キング、”強い女性”を育てたジレンマを歌うムーランの母の曲と、
仕事・結婚・出産と人生の選択で迷うテーマの根源になる3曲を選びました。
本作では、これらの楽曲に加え、私がこの企画への想いを込めた歌詞に大嵜慶子さんが華やかなテーマソングを作曲してくださいました。さらに、保科由里子さんがそれらの楽曲を、33歳女性の等身大の姿、インサイトをつく台詞で、30分のショートストーリーとして紡いでくださいました。
舞台空間として、「WELL-BEHAVED WOMEN」に登場する色々な時代や国を生き抜いてきた”お行儀の悪い女性達(ステレオタイプに囚われない)”の魂が宿る大きな樹木が中央にあるイメージがありました。人生で得ていく様々なものがなる不思議な木。何千年もの間、土から命の恵みを頂き、命を巡らせ希望の空へと伸びていく大きな木。これを表現するのに、ライオンキングでラフィキがシンバを浮き出すイメージから、色々な女性達の人生模様が描かれる樹木を想像しました。
今回、大変光栄なことに、編むという手法で多岐にわたる創作活動を行うニットアーティスト蓮沼千紘さんが、舞台の美術と衣裳として参加して下さり、ニットアートで多彩な生き様を編み込んで表現して頂くことが実現しました!色使い、ニットも素材や編み方を駆使され、本当に独創的で唯一無二、千紘さんの感性が光る象徴的な樹木が誕生しました。この樹木とカモフラージュできる衣装は、動きと合わせてフォルムも美しく、樹木を体現する縷々の樹役と樹木の精の衣装の色使いの違いも素晴らしかったです。樹木以外にも、切り株や花壇も表現して下さり、更には主人公が読んでいる「Well-Behaved Women」の本まで。これは、第一歩の編み方だそうで、スチール撮影で持っているものとも違う、様々なニット手法を操る千紘さんの創意工夫が見れます。無観客公演の初めての試みだったので、今回の空間での見せ方を逆算しましたが、最初の発想は、円形劇場で360度、この樹木を囲みたかったのと、”(観てる人も)樹木で繋がれていくこの命”という事をエンドロールに込め、配信でもお客様とニットで繋がる想いを表現しました。
そして、幻想的なアートの世界へ誘う、豪華なキャストが集結してくださったのです!
主人公の咲を、ナチュラルな演技でファンタジックな魅力を持つ小此木麻里(「塔の上のラプンツェル」ラプンツェル役歌の吹き替え、「ジャージー・ボーイズ」等)さんが演じてくださいました。30分間台詞は彼女だけなので、姉と電話してる設定でも一人芝居のような台詞量。短期稽古だったにも関わらず、見事に台詞のサブテキスト(実際の台詞通りではなく思っていること)も汲み取りながら、言葉に彩りを与え表情豊かに演じてくださいました。本人の話かと錯覚するほど、かなり共感度が高かったです!
女性たちの魂が宿る縷々の樹に、多彩な歌声で存在感を放つ高城奈月子(THE SOULMATICS リードボーカル、「ビューティフル」、「レント」等)さん!ナツさんの魂を揺さぶる歌声は衝撃的で、御本人のビッグハートなお人柄が滲み出るのか、私は何度も救済されました。昨年、コロナ渦で家族との別居が続く孤独を救ってくれたのも彼女でした。4人の異なる女性達を見事に歌い分けで下さり、その圧倒的なパフォーマンスはお客様にもしっかり届いたようです。
縷々の樹の精を、ダイナミックかつ繊細な踊りで魅せる MAOTO(「ハウ・トゥー・サクシード」、「WEST SIDE STORY Season2」等)さんが演じてくださいました。近年はグランドミュージカルでご活躍で踊る姿に魅了されていましたが、創作ダンス部だったり私がNYで衝撃を受けてハマったアルビン・エイリーの学校に通われていた事もあり、今回創作や振り付け含め、ご一緒できて嬉しかったです。常に舞台上にいて、主人公を見守り誘う表情まで優しく温かく、動くとキレがよくダイナミックでカッコよく、様々な魅力で魅せてくださいました。
音楽監督・演奏を務めて下さった大隅一菜さん。役者に寄り添い、シーンの情感を込めた演奏をして下さり、冒頭の始まり方や音楽でシーンの雰囲気を変えていくシーンでもうっとりしていました。
振付の弓野梨佳さんは、2曲目のビリージーンのテニスの試合をモチーフにした振付と、最後のテーマソングBLOOMを振付して下さいました。テニスチャンピオンのビリージーンの振付は、試合の行方のハイライトをボールの役割を担ったMAOTOさんを最大限活かし、躍動感がありました。BLOOMは華やかさと喜びを見事に表現してくれました。アダムとイブのイブの曲とムーランの母の歌に登場するムーランの回想ダンスは、MAOTOさんが振付をして下さいました。お茶目なイブと戦いにいく勇ましいムーラン、どちらも手の動きが印象的で面白かったです。
照明の松本永さんは、狭い空間の中でも幻想的な照明を作って下さり、
心情表現と場面表現を美しく表現して下さいました。
音響の大野美由紀さんは、制限のある空間の中で、音楽・声・環境音等のSEを見事なバランスで収録して下さいました。
ヘアメイクの手塚裕美さんは、普段から蓮沼さんとタッグを組まれているそうで、オシャレに彩りをキャラクターに足して下さいました。
舞台監督の鈴木拓さんは、ニットアートの美術の仕掛けや小道具も創意工夫して下さり、
希望を出した演出プランを見事に実現して下さいました。
映像の田中雄之さんは、狭い空間の中でも4Kの美しい映像で、絶妙なアングルから場面を切り取り、シーンの流れを汲み取ったカット編集で、美しい流れを映像でも作り出して下さいました。
更に、この魅力を藤井由依さんの躍動感ある写真や柳川忠之(EGACOH LLC)さんのビジュアルで伝えられて感謝しています。常にアイディアを出し合いながら共走して下さった制作の二人のおかげで作品が届けられました。
このような彩り豊かな方々のおかげで、
この企画・作品が紡ぎ出されたことに、
心から感謝します。
【CAST】 小此木麻里 / 高城奈月子 / MAOTO
【STAFF】
作詞・作曲: Carmel Dean(WELL-BEHAVED WOMEN)
作曲: 大嵜慶子(BLOOM)
脚本・訳詞: 保科由里子
構想・作詞・演出: 渋谷真紀子
美術・衣裳: 蓮沼千紘(ニットアーティスト)
音楽監督・ピアノ演奏: 大隅一菜
振付: 弓野梨佳(パシフィック・カンパニー) / MAOTO
照明: 松本永(eimatsumoto Co.Ltd.)
音響: 大野美由紀
ヘアメイク: 手塚裕美
舞台監督: 鈴木拓
配信映像制作: 田中雄之(Koto Production Inc)
フォトグラファー: 藤井由依
ビジュアルデザイン: 柳川忠之(EGACOH LLC)
衣裳製作助手: 竹之内咲 岡本陽奈
衣裳協力: sneeuw / BOY / moon vintage
舞台美術素材提供: 株式会社 SHINDO S.I.C ショールーム
制作: 梶原亜沙子 / 池田治樹
企画・制作: Luna-Hana Cosmopolitan Theatre Company
特別協力: ユナイテッド・パフォーマーズ・スタジオ and 米倉リエナ
松生紘子
山田元(俳優 / フローリスト)
春日希(俳優 / フラワーサイクリスト)
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